卓  話 

2019年10月9日

ゲスト卓話

「土砂災害から命を守る」

経済産業省技術指導員(採石災害防止)松本仁之氏


耶馬溪の地質と土砂崩壊
〔瀬戸内海の耶馬溪とは〕
名勝耶馬渓の地質は海底の火山活動で生まれた。耶馬溪火山の活動は、今から100万年くらい前の新生代第三期の終わり頃といわれ、当時、瀬戸内海は九州の腹部を中断して有明海に通じ、さらに東シナ海に通じていた。つまり耶馬渓から玖珠にかけての一帯は海であった。このときの基底をなす岩石は、花崗岩であるが、この基底の花崗岩を破って最初に噴出した火山岩は、山国町の金を含んでいる「変朽安山岩・プロピライト」で猿飛び千壺峡の甌穴群はこの岩石の上に出来たものである。

〔崩落場所の地質・植生〕
地表には、少量の岩石の露頭が見られるが全体的に見ると集塊岩噴出時の粒度の細かい「火山灰」が主体となっている。下部での、土砂の処理状況を見ると一部に大塊の岩石(コアストーン)が混入するがその混入比率は低い。立木については、大量の杉の倒木は皆根っこが短小で、土砂の崩落防止の面からするとその効果は無かったと考えられる。苗木の取り方、即ち挿し芽とりの場合には、大木になっても根っこは短小となることが林野庁のデーターで示されている。

〔土砂崩落原因の考察〕
崩落区域の中央部から地下水が流れ出て、V字型に崩壊した斜面を流れ下っている(地下水の湧出点)。この下部には固い岩石(集塊岩・凝灰角礫岩)が露出しているため、露出した岩石から下部は、不透水層となっている。このため不透水層より上部の地下水は、過去の降雨が徐々に浸透して水位は高くなっていたと推定される。このため地下水が滑り面を形成したものと思われる。地下水は、しばしば地すべりの潤滑油となると考えられている。この時期には、下部の集落周辺には、ここからの地下水(湧き水)が流出したり、各種の岩盤崩壊の前兆が現れていたと思われる。この地下水が濁れていたとすれば、上部の地層は、既に下方に向かって滑りはじめていたものと考えられる。崩壊部の下部には転落石防止用の柵が設置されていたとの住民からの証言もなされていた。





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