卓  話 

2019年4月17日

ゲスト卓話

「児童養護施設について」

社会福祉法人 聖ヨゼフ寮 施設長 衛藤祐治氏


 児童養護施設はイメージが悪く、とくに昔は粗野なところでした。最近は虐待や児童に対する関心も高まり、以前とはずいぶん変わりました。今、日本の人口は1億2,644万人です。一年間で26.3万人が減少しましたが、日本人だけだと45万人の減少です。その差の17万人は外国人の増加です(外国人は222.5万人)。いずれは外国籍の子供も児童養護施設を利用するようになるでしょう。

 児童養護施設は保護者のいない子供や虐待を受けた子供の養育と自立支援を目的とした入所施設です。全国に約600の施設があり、そのほとんどが戦後、法人格を取得しました。戦後は13万人いた戦災孤児の保護を目的としていました。日本では聖徳太子が悲田院をつくったのが児童養護施設のはじまりです。戦災孤児が減少した後は、不登校や非行などの入所者が増えました。家庭的に恵まれず、保護された子供が小学校6年生になると大分の施設から来るようになり、1年生のときは5〜6人だったのが中学3年生になると20人位にあっという間に子供たちが増えてきました。

 施設の子供たちは勉強習慣がなく、タバコを吸ったりして大変でした。当時は、ボスコが悪いのか、子供たちが悪いのかわかりませんでした。後で、施設に来る子供たちは虐待環境の中で育ったことがわかりました。それまでは、中学卒業後、社会に出るために、少しでも根性や頑張る力・耐える力・学力といった「鎧」を身につけさせたいと考えていました。その後、平成7年頃から虐待がクローズアップされ、ある本の中に「虐待を受けた子供たちには安心できる環境が必要」とありました。安心・安全な環境をまずつくり、それから課題を一緒に改善して行くことが大切です。子供たちの非行の原因は主に虐待環境だと分かったのです。それまでは「コラ!何しているんだ!」と強く叱るばかりで、今考えるとひどいことをしたと思います。

 保護者がいない児童、または保護者に監護させることが不適当と認められる児童を要保護児童といい、全国で約45,000人います。その中で児童養護施設に27,000人、その他は乳児院、教護院、心理治療施設にいます。また今、国が力を入れているのが里親で、今後は5年以内に50〜70%の小さい子供を里親にと考えているようです。要保護児童数の45,000人は、ここ10年間なぜか数がかわりません。児童数全体は確実に減少しているので、割合がどんどん上がっているということです。虐待相談で児童相談所にかかってくる電話数は、平成10年は5,352件だったのが平成20年には42,664件と約8倍になりました。平成28年にはこれが13万件になっています。背景は法律改正により虐待の通報が義務化されたからです。子供の前で親同士が暴力をふるう面前DVがあった場合も、警察が児童相談所に知らせています。これも増加の一因です。このことは日本の家庭における養育力が極端に劣化していることの現れです。今、日本全体が「早く、楽に、簡単に、便利に、楽しく」という心地よさを求めています。多くの人が自分の満足に目を向けた社会といえるでしょう。50歳以上の世代は「我慢、苦労、耐え忍ぶ」という文化がありますが、若い世代は自分の欲求を満たすために胆略的に考えます。子育ては親が自分の身を削って行っていましたが、今は自分の満足が優先されるので、ある日子供ができても、急にそのような生き方はできません。

 犬は、生後2ヶ月は親とともに過ごさせたほうがいいそうです。そうしないと病気になりやすく、噛みついたりするそうです。人間の赤ちゃんは絶対的に保護されないと生きていけません。それには親の目線が大切です。親はいつも見ていて、赤ちゃんの変化に気づいて、不快な状態を取り除いてあげます。これが繰り返されることによって赤ちゃんは愛着の対象者を確立します。6ヶ月から3歳までが一番この感情が育つそうです。その間に親から引き離されると心の傷となり、いろんな弊害を生じることがあります。子供が要求することに応えるアンテナをもって、不快を取り除くことで愛着ができるのです。今はスマホばかり見ていて、赤ちゃんを見ていないのかもしれません。愛着ができると、愛着の対象者が心の中に住む「内在化」という状況が生じ、「一人ではない」と感じるようになります。そして、それが家族から友達へと広がり、自分は大切な存在であることを感じます。施設に来る子供は、愛着の対象が心の中に住んでいないために、中学生になっても怖がる子が多く、自尊感情も低いです。愛着は基本的信頼感を生みます。愛着が十分に育たないと基本的不信感をもつようになります。今、中高年の引きこもりが51万人いるそうですが、親との愛着の問題が根底にあるような気がします。満足を求めるより感謝を、楽しみよりも喜びを見いだせる生き方が幸福につながると思います。



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