卓  話 

2016年2月10日

ゲスト卓話

「デザインの源」

大分県立文化芸術短期大学講師 松本康史氏


 今日はまず、はじめに茶道のお点前の動画を見て頂きたいと思います。茶道とは、伝統的な様式にのっとって客人に抹茶をふるまう事で、茶の湯とも言います。茶を入れて飲む事を楽しむだけではなく、広い分野にまたがる総合芸術として発展しました。また、茶道とはおもてなしの心です。茶道では「一期一会」という言葉があり「人との出会いを一生に一度のものと思い、相手に対し最善を尽くす」というものです。茶道ではこの精神にのっとってお茶をたてる事を大切にしています。数限りなくある作法、それらは一つひとつに意味があり、それらの根底にあるもの、それはとりもなおさず「おもてなしの心」と言えます。流れるような動きには全く無駄がなく所作の一つひとつが洗練されています。

 今度は、教室で後ろから2番目の蛍光灯を消すよう指示された学生が、スイッチを消す様子を見てみましょう。いろんなスイッチを押して20秒かかりました。取扱い説明書と照らし合わせながら行うと、操作を誤ることが劇的に減るでしょう。しかし、根本的な問題は天井にある蛍光灯と、壁にあるスイッチは90度向きが違うということです。ですから、天井に水平にある情報を、壁に垂直に置き換えなければなりません。そこで、スイッチを天井と同様に水平にしてみるとこの問題は解決します。

 人が自然とする行動を考えてみましょう。メガネやスマートフォンを拭くものがないとき、人は自然と袖口でスマートフォンを拭き、シャツの裾でメガネを拭きます。そこで、拭きものとして使用されるシャツの部分に拭きものを付けるデザインをしてみました。

次に横断歩道を渡る人を見てみましょう。多くの人は横断歩道の模様の上をまっすぐ渡らず、横断歩道以外の道路を斜めにショートカットします。そこで横断歩道の模様の一辺を円弧にして、人間が無意識で通るアールを横断歩道にしました。このデザインはまだ実用化されていませんが、人間の特性に根ざした、人間を思いやる素晴らしいデザインで、いろんな賞をもらっています。

次はよく見かける電車の中の風景です。二人が座ってスマホをいじっています。よく見ると二人とも鞄を床の上に置いています。そこで考えたのが、鞄の底を靴の裏にしてしまうというデザインです。鞄の中を見ると、底は靴の中敷きになっています。これは実際購入できる「上履きバッグ」という商品です。

次は、ゴミ箱にゴミを投げ込んでいる絵です。ゴミを投げ入れる人がどのくらいいるかわかりませんが、ゴミ箱を斜めにしてゴミを受け入れやすくするデザインにしてみました。

次は、駅のホームで、傘でゴルフのスイング練習をする風景です。そこで、ゴルフクラブで傘を作ってみました。これはニューヨーク近代美術館のショップで売っていて、デザイン的に高く評価されています。単純な考え方ですが、今までなかったものです。

次は椅子の後ろの二脚のみでバランスをとって後ろに傾いて座っている絵です。そこで後ろの二脚の外にV字に開く補助脚をつけて後ろに傾いて座っても安定するようにしました。こういうデザインは単に面白いだけでなく、後ろに寄りかかるという人間の行動をみて、デザインされたものです。

 次に紹介するアニメには人間の無意識の行動がちりばめられています。ある学生は、アニメの登場人物が昼寝をするのに座布団を二つに折って枕にしているのを見て、座布団に縫い目を入れて簡単に二つ折りにできる座布団をつくり、高く評価されました。もう一つはアニメの主人公が料理をしているところです。これを見て、まな板の端に磁石を入れて、包丁がまな板の端に自然と引き寄せられる、磁石入りまな板がつくられました。これらは人間の行動の一部です。普段見逃してしまい、人間の思考から姿を消してしまっているような行為でも、客観的に気づくことがデザインにとって大きなヒントとなります。

 デザインは狭義では、見た目の美しさを求める活動となりがちですが、そうではなく人へのおもいやりであり、利用する人の行為を滑らかにするようプランニングすることもデザイナーの大きな役割です。流行や情報に翻弄されることなく、人間本来の行動価値を見直した、人に寄り添ったものづくり、つまり「愛」が大切なのです。



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